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札幌地方裁判所 昭和62年(行ウ)11号 判決 1994年8月29日

原告

渡邊清壽

渡邊朱美

原告ら訴訟代理人弁護士

高崎暢

房川樹芳

髙橋剛

被告

北海道

右代表者知事

横路孝弘

右指定代理人

都築政則

外九名

主文

一  被告は、原告らに対し、各金一一〇万円及びこれに対する昭和五九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その九を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告渡邊清壽に対し、金四五一〇万円及びこれに対する昭和五九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を、同渡邊朱美に対し、金一八七〇万円及びこれに対する昭和五九年八月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

第二  事案の概要

本件は、さけ定置漁業権の免許申請について不免許処分を受けた原告らが、右処分は違法であると主張して、被告に対し、国家賠償法一条一項、三条一項に基づき、損害賠償を請求した事件である。

一  争いのない事実及び証拠上明らかな事実

1  当事者

(一) 原告渡邊清壽及び原告渡邊朱美(以下それぞれ「原告清壽」、「原告朱美」という。)は、昭和五一年五月ころから、北海道小樽市銭函において漁業を営んでいた者である。

(二) 北海道知事(以下「道知事」という。)がその諮問機関である石狩後志海区漁業調整委員会(以下単に「海区漁業調整委員会」という。)の答申を受けてした後記3記載の免許処分及び不免許処分にかかる事務は、国の委任に基づく機関委任事務であり、被告は、右機関委任事務に関して費用を負担する者である。

2  本件漁業権の告示

道知事は、昭和五九年一月三〇日、漁業法(以下単に「法」という。)一一条一項に基づき、北海道告示第一五一号をもって、小樽さけ定第三号定置漁業の免許(以下「本件漁業権」という。)について次のように定めた(乙一)。

(一) 免許予定日 昭和五九年三月八日

(二) 申請期間 昭和五九年一月三〇日から昭和五九年二月一三日午後五時まで

(三) 存続期間 免許の日から昭和六三年一二月三一日まで

(四) 漁業時期 九月一日から一一月三〇日まで

(五) 漁場の位置 小樽市地先

(六) 漁場の区域 海区漁業調整委員会に備え置く漁場図のとおり

(七) 地元地区 小樽市

3  原告らの申請等と道知事の行政処分

本件漁業権について、原告らは、訴外松坂研三と共同で、昭和五九年二月一日(後志支庁による収受は同月四日)、小樽市役所において道知事宛てに免許申請をしたところ、訴外有限会社協栄水産、訴外子出藤明一、訴外子出藤輝美及び訴外子出藤ミエも、共同して(以下単に「協栄水産」というようにいい、協栄水産とともに免許申請をした者を総称して「協栄水産ら」という。)、昭和五九年二月一〇日(後志支庁による収受は同月一三日)、同様に免許申請をしたため、本件漁業権はいわゆる競争出願の状態となった(乙二、三の各1)。

4  道知事は、法一二条に基づき、右各申請について海区漁業調整委員会の意見をきいたところ、右委員会は、右各申請者はいずれも免許について適格性がありとしたうえで、法一六条一二項、六項を根拠に、協栄水産らが第一順位となる旨の答申をし、道知事は、右答申のとおり、昭和五九年八月三一日、協栄水産らに対しては免許する旨の処分をし、原告ら外一名に対しては免許しない旨の処分をした(以下それぞれ「本件免許処分」、「本件不免許処分」といい、右各処分をあわせて「本件各処分」という。)(乙四、五、七の1ないし8)。

二  主たる争点

1  本件各処分の違法性

原告らは、海区漁業調整委員会の答申及びそれに基づいてされた本件各処分には、原告ら外一名と協栄水産らとの間の優先順位の判断を誤った違法があり、本来なら原告ら外一名が本件漁業権の免許を受けるはずであったと主張しているのに対し、被告は、協栄水産は法一六条六項の要件を満たす法人であって共同申請者の中で議決権及び出資額において過半を占めているから、協栄水産らが法一六条一二項、六項に基づいて第一順位になるとし、本件各処分は適法である旨主張している。

2  原告らの損害

原告らは、本件漁業権の免許が受けられなかったことによって、本来取得できるはずであった本件漁業権による収入が得られなかったと主張し、逸失利益及び慰謝料等の損害を請求するのに対し、被告は、仮に本件漁業権において原告ら外一名が協栄水産らに優先すべきであったとしても、原告らの主張する損害が発生したとは考えられないし、少なくとも原告らが右期間中に他の漁業等に従事して得た所得は損益相殺されるべきである旨主張する。

第三  争点に対する判断

一  本件各処分に至る経過について

前記第二の一の事実と証拠(甲一、二の1・2、三の1ないし9、四の1ないし4、五ないし七、乙二の1ないし11、三の1ないし34、四ないし六、七の1ないし8、八、証人青山栄、同山田和慶、同子出藤明一、同廣部武男、同永井孝季、原告清壽本人)によれば、次の事実が認められる。

1  本件漁業権について、原告ら外一名の申請と協栄水産らの申請とが競争出願になったため、道知事は、昭和五九年二月二〇日付けで、法一二条に基づいて海区漁業調整委員会に諮問したところ、右委員会は、同年五月八日、一〇日及び三〇日に現地調査を実施したうえ、同年七月六日、①原告ら外一名及び協栄水産らはいずれも法一四条一項一・二号に該当せず、定置漁業権の適格性を有するが、②協栄水産らは、議決権及び出資額において過半を占める協栄水産が法一六条六項の要件に該当するため、同条一二項により第一順位となり、原告ら外一名に優先する旨の決議をし、同年七月九日、道知事に対し、その旨答申した。

2  ところで、原告清壽は、右決議に先立つ同年二月一三日ころ、海区漁業調整委員会に対し、①子出藤明一や協栄水産の社員である訴外石井賢治郎らは、過去において小樽さけ定三号の免許を受けたことがあるが、分割操業や無免許操業等の違法操業を行なっていた、②協栄水産は、その社員である藤田氏や石橋氏が地元漁民ではない等の理由から、法一六条六項の要件を欠いている旨の記載のある書面(甲三の2)を提出し、その実態を把握したうえ審査を求めると要望し、また、海区漁業調整委員会の右決議を知った後においては、原告ら外一名の名義で、同年七月九日ころ、道知事及び右委員会に対し、原告清壽の右各要望書と同趣旨の要望書(甲三の7)を提出していた。

3  その結果、海区漁業調整委員会は、同年七月一六日及び同月一七日、再び調査を行ったところ、協栄水産の社員の大半について、その職歴や同種漁業の経験の時期等に関し従前の調査とは異なる結果となり、同年八月六日開催の委員会において、海区事務局から、従前の判定資料に訂正があった旨の報告がなされたものの、結局、そのことは協栄水産らと原告ら外一名との優先関係には影響がないとして、単に報告事項として処理され、再審議はされなかった。

4  海区漁業調整委員会の前記1記載の答申を受けた道知事は、右答申のとおり、協栄水産らが第一順位であると判断したため、同年八月三一日付けをもって、協栄水産らに対する本件免許処分及び原告ら外一名に対する本件不免許処分をした。

5  なお、原告ら外一名のうち、原告清壽は、本件各処分を不服として、同年一〇月二九日付けで、農林水産大臣に対し審査請求を申立て、本件各処分の取消と本件漁業権について免許する旨の処分を求めたが、農林水産大臣は、「原告清壽に対する免許処分を求める部分を却下し、本件各処分の取消を求める部分を棄却する」旨の裁決をした。

二  原告ら外一名と協栄水産らとの間の優先関係

1  原告ら外一名について

原告ら外一名は、いずれも法一六条一項一号の漁業者又は漁業従事者に該当し、そのうち議決権及び出資額において過半を占める原告清壽が、昭和四九年から同五一年まで、石狩後志海区においてさけ定置漁業(石さけ定第二号)に従事した経験を有していることは当事者間に争いがないから、同条一一項により、原告ら外一名の共同申請については、原告ら三名が同条一項一号、同条二項一号、同条四項一号に該当するとみなされる。

2  協栄水産らについて

(一) まず、協栄水産が法一六条六項の要件に該当するか否かについて検討する。

同項本文は「地元漁民七人以上が構成員又は社員となっている法人」と規定しているが、「漁民」とは、漁業者または漁業従事者をいい、「漁業者」とは漁業を営む者であるのに対し、「漁業従事者」とは漁業者のため水産動植物の採捕又は養殖に従事する者と規定されているところ(法二条二項)、水産動植物の採捕又は養殖に従事する者とは、採捕行為又は養殖行為自体に直接従事している者のほか、社会通念上、採捕又は養殖なる連続した行為の一部分に従事する者を含むと解するのが相当である(乙一〇、一七、一八)。

ところで、協栄水産の社員は「石井賢治郎、小野松雄、佐藤秀明、石井カツエ、小野惠子、佐藤和子、石橋和男、藤田政昭」の計八名であり、そのうち藤田政昭は漁民でないことは当事者間に争いがないから、協栄水産が前記要件を満たすためには、その余の社員全員がここでいう「漁民」でなければならない。

そこで、協栄水産の社員である小野惠子が「漁民」であるかについて検討すると、被告は、「小野惠子は、西村食品に勤務するかたわら、出勤前や退社後ないしは日曜等の休日に、同女の父親である小野松雄が経営するほっき桁曳網、雑刺網などの漁業に従事していた者であり、法八六条一項の海区漁業調整委員会の選挙権をも有していたのであるから、同女は漁民である」旨主張し、同女も同趣旨の証言をするほか、証人佐藤和子、同石井カツエ、同石橋和男及び子出藤明一もその具体的内容は異なるものの、小野惠子が小野松雄の手伝いをしていたとの趣旨の証言をし、前記海区漁業調整委員会の最終的な判定資料でも右主張のとおりの調査結果になっている。

しかしながら、そもそも協栄水産らの本件漁業権設定の免許申請書に貼付された同女の職歴調書(乙三の25)には、昭和五五年から昭和五八年までの間、同女が小樽さけ定第三号のさけ定置漁業の従事者であり、昭和四九年から昭和五五年までの間、ほっき桁曳網、しゃこ刺し網及び雑刺網の従事者であった旨記載されていたが、原告清壽や子出藤明一の要望によって再調査した結果、昭和五九年七月六日開催の海区漁業調整委員会での判定資料上、右のように訂正されたものであるところ(乙五、六)、右調査は関係当事者からの事情聴取を中心にしたものにすぎないうえ、小野惠子の証言する具体的労務内容は、「父親に弁当を届けにいったり、船を浜に引き上げるのを手伝ったり、取れたものを加工屋に引渡したり、しゃこの皮をむいたりする」というものであるから、同女が小野松雄の子であり、他に仕事をもっていて、その合間に父親の手伝いをしていたということをも考慮すると、同女が従事していた右労務は、単に家族として父親の漁業にかかわっていたと評価すべきものであって、社会通念上、同女が採捕または養殖なる連続した行為の一部分に従事していたということはできず、したがって、同女が漁民であるとはいえない(なお、右事実関係のもとでは、同女が海区漁業調整委員会の選挙権を有していることから直ちに同女を漁民であると推認することはできない。)。

更に、石橋和男が「漁民」であるかについて検討すると、被告は、「同人はかねてよりほっき桁曳網やしゃこ刺し網などの漁業に従事していたし、石井賢治郎らが免許を受けて小野松雄と共同経営していた昭和五七年ないし五八年の小樽さけ定第三号のさけ定置漁業についても、主にいわゆる陸廻りとして魚の選別、運搬等の作業に従事していた」旨主張し、前記のとおり、海区漁業調整委員会の最終的な判定資料でも右主張のとおりの調査結果になっている。

しかしながら、協栄水産らの本件漁業権設定の免許申請書に貼付された同人の職歴調書(乙三の27)には、昭和四九年から昭和五八年までの間、同人が小樽さけ定第三号のさけ定置漁業の従事者であり、かつ、右の間、ほっき桁曳網、しゃこ刺し網及び雑刺網の従事者であった旨記載されていたものが、昭和五九年七月六日開催の海区漁業調整委員会での判定資料上は、右さけ定置漁業の名称は小樽さけ定第一及び第三号とされ、更に、その後の海区漁業調整委員会の調査を経て、前記のとおり、訂正されたものであるところ(乙五、六)、右調査は、前記のとおり、関係当事者からの事情聴取を中心にしたものにすぎず、そもそも石橋和男は、「昭和五六年九月ころ、札幌厚生病院を退院し、以後、同病院に通院しながら石井賢治郎が経営していた漁業に従事した、また、昭和五九年九月一日から開始される石井賢治郎が経営するさけ定置漁業に従事するため当時勤務していた極東高分子株式会社を右同日付けで退職した」旨証言しているものの、同人が漁業に従事していた時期について前記被告の主張との間に齟齬があるうえ、その労務内容についても、同人が、さけ定置漁業において従事していた労務内容として具体的に証言するのは、「魚箱の目方かけ(計量)のほかは、漁箱を並べたり、風袋の計量をしたり、船の巻き上げのフックかけや薪を拾って焚く」というものであるのに対し、証人小野惠子、同佐藤和子及び石井カツエの各証言ではいずれも石橋がさけ定置の船に乗って沖に出ていた等の証言をしており、両者の間には、労務内容の性質につき看過できないくい違いがあって、結局、石橋和男が漁民であるとの右各証拠はいずれも直ちに採用することはできず、他に同人が漁民であるとの的確な証拠はないというべきである。

したがって、法一六条六項のその余の要件を検討するまでもなく、協栄水産が同項の要件を満たす法人であるとは認められないから、本件競争出願において、法一六条一二項、六項を根拠として、協栄水産が原告ら三名に優先するとは認められない。

(二) 他方、法一六条一一項二文によって、協栄水産が同条一項二号(漁業者又は漁業従事者以外の者)に該当するものとみなされて、同条一項に基づき、原告ら外一名が協栄水産らに優先するかについて検討すると、原告らは、協栄水産と子出藤明一との昭和五九年二月五日付け協定書(甲三の3)を根拠として、漁業権の実質的な持分は右両者がそれぞれ五〇パーセントずつ有しているから、協栄水産が協栄水産らのなかで議決権及び出資額において過半を占めているとはいえない旨主張するが、そもそも右協定書は漁業権の持分についての定めがあるだけであって議決権等の定めはないのであって、協栄水産らの本件申請の際、申請書に貼付された協栄水産らの共同経営契約書(乙三の34)によれば、協栄水産が五一パーセントの出資をし、議決権及び出資額において過半を占めていることが認められる。したがって、原告らの右主張は理由がない。

3  もっとも、協栄水産は、その目的は漁業を営むことを主たる目的とする法人であると認められるから、原告らと同様、漁業者として漁民に該当するというべきであるが、本件漁業権の免許申請をした昭和五九年二月一〇日よりわずか数日を先立つ同年二月六日に設立された有限会社(乙三の3)であり、それ自体は同種の漁業に経験がある者とは到底いえないから、原告清壽が、法一六条二項に基づいて協栄水産に優先するというべきであり、結局、本件漁業権について、法一六条一一項に基づき、原告らが協栄水産らに優先することとなる。

三  道知事ないし海区漁業調整委員会の過失

以上のように、本件申請において原告らが協栄水産らに優先すべきであったところ、前記一記載のように道知事及び海区漁業調整委員会に対し本件各処分前の段階で原告清壽からの指摘があったことをも考慮すると、道知事及び右委員会は、原告ら外一名と協栄水産らとの優先関係についてより慎重に検討すべきであるにもかかわらずこれを怠り、誤った判断のもとで本件各処分をしたというべきであって、本件各処分をするにつき過失があったというべきである。したがって、被告は、国家賠償法一条一項、三条一項に基づき、原告らが本件不免許処分によって被った損害を賠償すべき責任がある。

四  原告らの損害

1  逸失利益

原告らは、本件漁業権による営業によって、その存続期間である五年間に計一億円を超える利益が得られたはずであり、これを松坂研三との出資額の割合(原告清壽は六〇万円、原告朱美及び松坂研三は各二〇万円、乙二の10)で計算すると、原告清壽は六〇〇〇万円以上、原告朱美は二〇〇〇万円以上の収入となり、そこから経費を四割としてこれを控除しても、原告清壽は三六〇〇万円、原告朱美は一二〇〇万円の利益を得られたはずであると主張し、原告清壽も右主張に沿った供述をしている。

そこで、原告らの右主張の当否を検討するが、前記のとおり、本件漁業権において、原告ら外一名が協栄水産らに優先するのであるから、本来であれば、原告ら外一名が本件漁業権の免許を受け、その存続期間である昭和六三年一二月三一日までの五年間、その営業をなし得たはずであるから、本件不免許処分によって原告ら外一名はその営業利益を得ることができなかったというべきである。

しかしながら、そもそも、証拠(甲二八)によれば、右の間に協栄水産が得た利益は別紙計算書1のとおり計四一八万九七七八円であり、これを協栄水産の共同申請者間における出資割合(五一パーセント)を考慮するとしても、その二倍の八三七万九五五六円にしかならないところ、原告ら外一名の中にはさけ定置漁業を経営した経験のある者がいないこと(乙二の2ないし4)や本件漁業権の着業に要する資金として計上されていた金額は、協栄水産らが計三六〇万円である(乙三の8)のに対し、原告ら外一名は計六〇万円であったこと(乙二の5)等に照らすと、原告ら外一名において協栄水産らと同程度の漁獲量を得られたという蓋然性そのものが認められず、また、仮に協栄水産らと同程度の漁獲量を得て同程度の利益を得られたとしても、本件漁業権の営業によって原告らが得られたであろう利益を正確に算出するには、原告らがその間に他の漁業で得ていた利益を損益相殺しなければならないが、原告らのこの間の収入は証拠上明らかでないから、原告らそれぞれについて当該年の男女別の賃金センサスによって本件漁業権の漁期(毎年九月一日から一一月三〇日までの三か月間)の収入を推認するに、別紙計算書2のとおり、原告清壽は計五五五万六四〇〇円、原告朱美は計三三九万七八五〇円、その合計は八九五万四二五〇円となり、前記協栄水産らの収入概算を上回ることとなる。

したがって、原告らの逸失利益を認めることはできない。

2  慰謝料

本件不免許処分によって、原告らに逸失利益が生じたとは認められないが、本件各処分には原告ら外一名と協栄水産らとの間の優先順位を誤った違法があり、道知事ないし海区漁業調整委員会にこれについて過失があることは前記のとおりであって、原告らは、右違法な不免許処分によって精神的損害を受けたことは明らかであるから、本件事案の内容及び結果、原告らが本件漁業権による漁業をできなかったこと、その他本件審理に顕れた一切の事情を考慮すると、原告らが本件不免許処分によって受けた精神的苦痛を慰謝するには、それぞれ一〇〇万円をもってするのが相当である(請求額は、原告らそれぞれについて五〇〇万円)。

3  弁護士費用

本件事件の内容、認容額、審理の経過等に鑑みると、本件不免許処分と相当因果関係のある損害として被告に賠償を求められる弁護士費用は、原告らそれぞれ一〇万円とするのが相当である(請求額は、原告清壽について四一〇万円、原告朱美について一七〇万円)。

第四  結論

以上によれば、被告は、原告らそれぞれに対して、金一一〇万円及びこれに対する本件不法行為の日である昭和五九年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

よって、本訴請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用し、仮執行宣言の申立てについては相当でないからこれを却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官大澤巖 裁判官見米正 裁判官才原慶道)

別紙計算書1、2<省略>

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